小説

『 どうかこの声が、あなたに届きますように (文春文庫)』 浅葉 なつ(著)

こんにちは、こうへいです。

小説『 どうかこの声が、あなたに届きますように (文春文庫)』 浅葉 なつ(著)を紹介します。

3回は読んでいてストーリーをわかっているはずなのに毎回泣いてしまいます。

少しでも生きづらさを感じたことがある方は琴線に触れると思います。

ラジオが物語の中心となるのでラジオ好きな方におすすめです。

ですがラジオを聞かない僕でもまったく気にせず楽しめました。

オススメ度:

あらすじ

地下アイドル時代、心身に深い傷を負い、鎌倉の祖母のもとでひっそりと生活を送っていた20歳の小松奈々子。そこに突然現れたラジオ局のディレクター黒木から、番組アシスタントにスカウトされる。
初日の生放送は、後に「伝説の十秒回」と呼ばれる神回となり、かつてラジオ界で絶大な人気を誇ったパーソナリティの片鱗を感じさせるものだった……!?
大食いのアナウンサー、演じるキャラに疲れている女性芸人、売れっ子のオネェタレント…。様々な仲間に囲まれ、時に黒木と罵り合いながら、奈々子はラジオの世界に向き合っていく。それは自身の傷や、過去とも対峙しなければならなかったが、奈々子が生き直そうと決めた「小松夏海」の存在は、次第に黒木たちをも巻き込んで、確かなムーブメントとなっていく。そしてその言葉は、子どものできない夫婦や、大人になることの意味を考える高校生など、切実な日々を生きるリスナーたちの、ほんのわずかな未来を動かし始めていた。

ポイント

小松奈々子・小松夏海

小松菜奈々子は主人公の本名で、アイドル時代の芸名でもあります。

小松夏海はラジオのアシスタントとして働き始めてからの活動名です。

アイドルをやめてからラジオ番組のアシスタントをするまでには、3年の期間がありました。

アイドルをやめるきっかけとなった出来事のせいで、心身に深い傷を負ったからです。

マスクも手放せなくなってしまいました。

母親

母親は昔から自分のことしか考えず、幼い奈々子を一人にして遊びに行くような性格です。

それだけでも毒親だと思ってしまいますが、もっとひどいことがあります。

奈々子がマスクを手放せなくなったのは母が原因です。

アイドル時代にひったくりにあい、その際に引きずられたことで左頬を怪我してしまいました。

「アイドルが顔に傷なんて台無しよぉ。女としての価値も無くなったわね」

母親の呪いの言葉によって奈々子は人前に出るのが怖くなってしまいました。

娘の気持ちに寄り添えない母親に嫌気がさしますね。

さらには物語の途中でも…

もけもけ太郎

このかわいい名前は、ある中学生のラジオネームです。

もけもけ太郎の投稿がきっかけで奈々子は、番組の中で自分の意見を言えるようになり今まで以上に存在感を出せるようになりました。

似たような境遇で育ち、気持ちをわかってあげられる奈々子だからこそ出てきた言葉に胸を打たれます。

もけもけ太郎も奈々子に救われたはずです。

感想

主人公である小松奈々子・小松夏海だけでなく、リスナー視点の章もあります。

この記事ではそれぞれの展開について触れていませんがどの話も好きです。

奈々子もそうですが、リスナーたちもつらい出来事を経験しています。

登場人物全員がラジオ、そして奈々子の言葉のおかげで前を見て生きていこうという気持ちになっています。

さらに後半では、今までラジオを通してしか関わりがなかった人たちが、実際につながっていきワクワクします。

奈々子のまっすぐな言葉が心に刺さります。展開もまっすぐで胸が熱くなります。

表紙の絵が印象的ですよね。最後まで読むと、この絵に込められた意味がわかってじんわりすること間違いありません。

印象に残った言葉

「いいか小松、ラジオにはテレビやネット動画と違って映像がない。それは一見、情報量が少ないように思えるが、明確なものがない分、リスナーはそれを補って想像する。そうして頭の中で想像されたものは、誰にも否定されないし奪えない。だから想像させろ。リスナーに、姿の見えないお前を想像させるんだ」


そんな自分の声が、電波に乗って一体どこに届くというのだろう。  誰に届くというのだろう。


全部私が肯定する。全部私が認める。今日も息してるだけで偉いって言う!  だから…… ――だから、生きてください!いなくなった方がいいなんて絶対に言わないで!

最後に

この作品が好きな方には、同じ作家が描いている『神様の御用人』というシリーズもおすすめです。

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