こんにちは、こうへい(@koheinoblog)です。
小説『あなたへ』 森沢 明夫(著)を紹介します。
降旗康男監督、高倉健主演で公開された映画の脚本を基に描かれた小説です。
映画を観たことはありませんが、小説を読んで、この著者ならではのやさしさが随所に感じられました。
この小説のキーワードは「手紙」「キャンピングカー」「種田山頭火」です。
オススメ度:
特におすすめな方
やさしい物語が好きな方
車旅が好きな方
羽を伸ばしたい気分の方
あらすじ
富山の刑務所で作業技官として働く倉島英二。ある日、亡き妻から一通の手紙が届く。そこには遺骨を故郷の海に撤いてほしいと書かれており、長崎の郵便局留めでもう一通手紙があることを知る。手紙の受け取り期限は十二日間。妻の気持ちを知るため、自家製キャンピングカーで旅に出た倉島を待っていたのは。
目次
第一章 それぞれの夏の夜
第二章 受け取れない手紙
第三章 羊雲のため息
第四章 嘘つきの果実
第五章 便箋に咲く花
第六章 優しい海
第七章 かぜかぜ吹くな
第八章 あなたへ
第九章 空気のような言葉
感想
表紙が高倉健の写真だったので映画があるとはわかりましたが、小説より映画が先とは知りませんでした。
東宝から幻冬舎に小説化の話が持ちかけられ、幻冬舎が著者に依頼したそうです。
映画を観たことはないので比較はできませんが、小説は単なるノベライズではないとのことです。
著者である森沢自身も「映画の尺ではどうしても表現しきれない部分を、小説ではできるだけ丁寧にすくいとっていこうと思いました」と語り「読了後に、自分の一番大切な人のことを思い浮かべてみてくれたらうれしい」と話している。
あなたへ (映画) - Wikipedia
僕は著者の小説を他にも何冊か読んだことがありますが、確かにこの物語を読んで、この著者ならではだと思いました。
やさしく前を向かせてくれるような感覚がありました。
主人公の英二は規則正しい生活を送り、誰にも迷惑をかけずに生きるというような、どこまでも平坦で受け身の人生を送っていました。
しかし妻の死、そして遺言書がきっかけで旅に出ます。
道中でいろんな出会いがあり、英二のこれまでの人生にはなかったような経験をたくさんします。
英二は竹田城跡で旅の友に、亡き妻の座右の銘を話します。
・他人と過去は変えられないけれど、自分と未来は変えられる
・人生には賞味期限がない
英二自身もこの言葉に影響を受け、旅の中でも変わっていくのが感じられます。
これを見て、真逆の意味ですが、ふとある言葉を思い出しました。
それは、America's Got Talent(AGT)というオーディション番組に出ていた女性の言葉です。
"You can't wait until life isn't hard anymore before you decide to be happy.”
和訳すると「人生が辛くなくなるまで待ってから幸せになろうと決心するようではいけない」でしょうか。
辛い状態の中でも幸せを追求しないといけない、そして同時に、辛くなくなるまで待ってから幸せになれるほど人生は長くないというような思いを感じました。
英二の妻の座右の銘とAGTに出ていた女性の言葉。
意味は違いますが、どちらも前向きに生きようという気持ちにさせてくれます。
そして、身が引き締まるような思いもします。
印象に残った言葉
胸の内側には様々な「想い」が溢れて、熱をはらませていた。だが、その「想い」はどうしても「言葉」になってはくれなかった。もしも不用意に「言葉」に置き換えたなら、それは限りなく「さようなら」に近い響きをまとってしまいそうな気がするのだ。
このとき、私は知った。悲しさよりも、虚しさよりも、喪失感よりも、ありがとうという想いを抱いたときの方が、はるかに涙腺が緩むということを。
他人の厚意は受けるべき
それもよからう草が咲いてゐる
知らなかった単語・知識
指弾(しだん)
① 曲げた指を急に伸ばして物をはじくこと。
精選版 日本国語大辞典
② 指さして糾弾すること。転じて、非難すること。
馥郁(ふくいく)
香気の盛んにかおるさま。よいかおりのいっぱいに漂っているさま。
精選版 日本国語大辞典
風光明媚(ふうこうめいび)
自然の風景が清らかで美しいこと。ながめがよいこと。
四字熟語を知る辞典
[解説]「風光」は景色、眺め。「明媚」は山や川の景色が清らかで美しいこと。
アゴ
「あご」とは、九州北部から日本海側の地域で呼ばれている「トビウオ」の呼称です。
九州のあごってなんのこと?|あごいろは|九州あご文化推進委員会 (kyushuago.jp)
あごだしを聞いたことも食べたこともあったのに、トビウオだと知らなかったです…。