こんにちは、こうへい(@koheinoblog)です。
小説『レインツリーの国』 有川 浩(著)を紹介します。
図書館戦争シリーズ二作目の『図書館内乱』で登場する本です。
ただしシリーズを読んでいなくても、まったく関係なく楽しめます。
コンプレックス・トラウマをはらんだ恋愛小説で、2人のやり取りが秀逸です。
この小説のキーワードは「忘れられない小説」「聴覚障害」「メール」です。
オススメ度:
特におすすめな方
甘さだけではなく、苦みのある恋愛小説が好きな方
図書館戦争シリーズが好きな方
※ただし登場人物がリンクしているというわけではありません。
登場人物が多い小説が苦手な方
あらすじ
きっかけは1冊の本。かつて読んだ、忘れられない小説の感想を検索した伸行は、「レインツリーの国」というブログにたどり着く。管理人は「ひとみ」。思わず送ったメールに返事があり、ふたりの交流が始まった。心の通ったやりとりを重ねるうち、伸行はどうしてもひとみに会いたいと思うようになっていく。しかし、彼女にはどうしても会えない理由があった―。
目次
1 直接会うのが駄目やったら、せめて電話だけでもどうかな。
2 「……重量オーバーだったんですね」
3 傷ついた埋め合わせに自信持たせてやろうなんて本当に親切で優しくてありがとう。
4 「ごめんな、君が泣いてくれて気持ちええわ」
5 歓喜の国
あとがき
解説・山崎弘
感想
ひとみと伸のメールでのやり取り、心のキャッチボールは鳥肌が立つほどでした。
作中に出てくる「フェアリーゲーム」という本の台詞をオーバーラップさせているのもすごいです。
自分が関西出身というのもあるかもしれませんが、伸の関西弁で感情移入がしやすかったです。
関西弁の方が気持ちがストレートに伝わるような気もします。
フィクションではありますが、聴覚障害については綿密な取材の上で正しく描写されています。
無知はいけないと実感しました。
日本語を習得するより前になったか、後になったかで文化がかなり違ってくるというのも知りませんでした。
耳が聞こえない、聞こえにくいという状態は共通していても、性格までが同じわけではないという当たり前のことにも気づかされました。
この物語を読んで、相手を思いやるって難しいことなんだなと改めて思いました。
自分としては相手のためだと思って言葉をかけたり、行動をしても、相手がどう受け止めるかはわかりません。
相手の立場に立って考えようとしても結局は、自分のものさしで考えざるをえません。
例えば「がんばれ」という言葉が思い浮かびます。
嬉しく思う人もいれば、余計なお世話だと嫌な気持ちになる人もいます。
人によって違うのはもちろん、同じ人でもそのとき次第で変わることもあると思います。
何が正しいかはわかりません。
こう思ったからこそ、あとがきで心に響くところがありました。
あとがきで著者は以下のように述べています。
立派で正しい人になれないのなら、間違って打ちのめされる自分でいるしかない。少なくとも、何も感じなくなるよりは間違う度に打ちのめされる自分でいたい。
余裕がないと自分の都合を優先して、相手に苛立ってしまうことがあるという著者が出した結論です。
謙遜で書いている部分もあると思いましたが、素敵だなと思いました。
著者と僕のシチュエーションは全く違いますが、この心構えはいつでも大切だと思います。
また解説でびっくりしたのが、アニメでは『レインツリーの国』を含む小牧と毬江のエピソードが地上波で放送されなかったそうです。
それは、毬江が聴覚障害者という設定だったからなんです。
これを知って、無意味な言葉狩りの一種のように感じました。
差別をなくすことが目的のはずなのに、その人々自身を話に出すことをタブー化して、いないものとして扱うようでは本末転倒です。
最近ますますこのような風潮が強いので、変わってほしいなと思います。
印象に残った言葉
無意味に見えるのは自分の立場で見るからで、それが必要な人がいるということを突き詰めて考えたことはあったのか
気にするしかない人に、そんなこと気にするなよというのはむごいです。
伸さんが私に言うようなことは、もう誰かが絶対に言ったことなんです。
いろんな物事にフラットになるには、ハンデやコンプレックスがあるときついねん。
痛みにも悩みにも貴賤はない。周りにどれだけ陳腐に見えようと、苦しむ本人にはそれが世界で一番重大な悩みだ。
知らなかった単語・知識
レインツリー
モンキーポッド(学名:Albizia saman、シノニムSamanea saman)は、熱帯アメリカ原産のマメ科ネムノキ亜科ネムノキ属の常緑高木。別名、レインツリー、アメリカネムノキ(亜米利加合歓木)。
モンキーポッド - Wikipedia
日本国内では、ハワイ・オアフ島のモアナルア・ガーデンにある大樹が日立グループのTVCMの題材に永く取り上げられており、「この木なんの木」でお馴染みの別名「日立の樹」として知られる。
きっぷ(気っ風)
《「きふう」の音変化》その言動からうかがえる、人の気性。特に、思いきりがよく、さっぱりとした気性をいう。気前。「気っ風がいい」
デジタル大辞泉