こんにちは、こうへいです。
小説『 チア男子!! (集英社文庫)』 朝井 リョウ(著)を紹介します。
チアリーディングを始めた男子大学生たちを描いた、熱量のある青春物語です。
チーム活動が好きな人や、まっすぐで熱い小説が好きな人におすすめです。
オススメ度:
あらすじ
大学1年生の晴希は、道場の長男として幼い頃から柔道を続けてきた。
だが、負けなしの姉と比べて自分の限界を悟っていた晴希は、怪我をきっかけに柔道部を退部する。
同時期に部をやめた幼なじみの一馬に誘われ、大学チア初の男子チームを結成することになるが、集まってきたのは個性的すぎるメンバーで…。
ポイント
チアリーディング
スポーツの試合においてチア(声援・掛け声)で群衆を先導する“チア-リーディング” に由来。
チアリーディング競技の中には、「チアリーディング」と「パフォーマンスチア」があります。
競技大会では技の完成度や同調性だけでなく、表情やエネルギーなど表現力も採点対象となります。
一般社団法人日本スポーツチア&ダンス連盟
「チア」と略して聞くことが多いため、チアダンスと同じものだと思っている人もいるかもしれません。
しかし競技内容が大きく異なるようです。
1番の違いは、チアリーディングではバク転や組体操のようなアクロバティックな動きがありますが、チアダンスでは禁止です。
知らない方も、巻頭にチアリーディングのルールや用語説明、そして絵付きのの技説明があるので安心してください。(文庫版でついていましたが、単行本はわかりません)
技についての描写もイメージしながら読むことができます。
溝口の名言
チームメンバーの1人の溝口は、日常会話で偉人の名言を引用します。
例えば、初めて出てきた名言はこちらです。(地の分省略)
「…タイミング逃しすぎだろ」
「【機会が二度君のドアをノックすると考えるな】」
他にもたくさん出てきます。知っているものも知らないものもありました。
溝口の名言は、この小説の魅力の1つだと感じます。
現実でいたら少し鬱陶しいかもしれませんが…
反省ノート
本格的な専任コーチがついてから、毎日の練習後に反省ノートを書くように言われました。
思ったことは何でもよく、とにかく毎日書きます。
自分のノートはコーチにしか見せないので、みんな赤裸々な内容を綴ります。
コーチがいる体育館練習の日に提出して、コーチも添削や返事を書いてくれます。
感想
笑顔になれて泣ける青春物語でした。
それぞれのメンバーの弱さ・コンプレックスを描くのが上手です。
みんな弱さやコンプレックスを抱えながらも、そんな自分を変えたいと思ってチアリーディングに臨みます。
だんだん読み進めていくうちに、小説の中の登場人物ではなく実際の仲間のように感じていました。
そして最後の章「二分三十秒の先」は完全に感情移入していました。
大会での演技が描かれていますが、追想という演出が憎いですね。
この小説を読み終わってから、実際のチアリーディングのパフォーマンスをYoutubeで見てみました。
パフォーマンスの美しさや迫力は、やはり動画のほうがわかりやすいです。
それと同時に作中で描かれていた怖さもはっきりと理解できました。
スタンツ(組体操のような技)は信頼関係がないと成立しないというのが実感できます。
トップ(上に立つ人)は飛ばされますし、ベース(トップを支える人)は受け止めなければいけません。
どちらの役割にも怖さがあります。
しかし観客を不安にさせてはいけないのです。笑顔にする競技です。
華やかなパフォーマンスの裏には、血と汗と涙の滲むような努力があることでしょう。
ですが信頼関係を築くのは練習時間だけでは厳しいはずです。
この小説でもいっぱいありますが、他愛のない話、くだらないノリすべてが無駄じゃないなと思います。
実際僕は中学・高校・大学と部活動でチームスポーツをやっていましたが、くだらないノリがいい思い出だったりします。
印象に残った言葉
チアリーダーとは、観客も選手も関係なくすべての人を応援し、励まし、笑顔にする人のこと。そして、そのために自らの努力を惜しまない人のこと。
人は苦悩を突き抜けて、歓喜を勝ち得る。
正しいだけじゃ、人は動かせん。
でも最近気づいた。周りは良く、大丈夫、勝てる、おまえはもっと強くなれるって言う。だけどさ、そういうときに欲しい言葉ってそんなものじゃないんだよね。それでわかったんだ。私がハルに言ってきた言葉は、ハルにはずっと、重荷だったんだね。
今までがんばってきたんだから、大丈夫。