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本屋大賞『同志少女よ、敵を撃て』 逢坂 冬馬(著)感想 

こんにちは、こうへいです。

小説『同志少女よ、敵を撃て』 逢坂 冬馬(著)を紹介します。

ソ連の女性狙撃手の半生を描いた物語です。

2022年本屋大賞受賞、第11回アガサ・クリスティー賞大賞受賞作です。

オススメ度:

『同志少女よ、敵を撃て』あらすじ・情報

独ソ戦が激化する1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの日常は、突如として奪われた。急襲したドイツ軍によって、母親のエカチェリーナほか村人たちが惨殺されたのだ。自らも射殺される寸前、セラフィマは赤軍の女性兵士イリーナに救われる。「戦いたいか、死にたいか」――そう問われた彼女は、イリーナが教官を務める訓練学校で一流の狙撃兵になることを決意する。母を撃ったドイツ人狙撃手と、母の遺体を焼き払ったイリーナに復讐するために。同じ境遇で家族を喪い、戦うことを選んだ女性狙撃兵たちとともに訓練を重ねたセラフィマは、やがて独ソ戦の決定的な転換点となるスターリングラードの前線へと向かう。おびただしい死の果てに、彼女が目にした“真の敵"とは?

・ページ数:493ページ
・価格:Kindle1881円、単行本2090円

『同志少女よ、敵を撃て』がおすすめな人

すべての人

フィクションの要素ももちろんありますが、全体の流れとしては史実に基づいているようです。

実際にソ連には女性狙撃隊があり、作中に登場する伝説の狙撃手・リュドミラ・パヴリチェンコも実在の人物です。

戦争について、そして人の生き方について考えさせられる作品です。

かといって堅苦しいわけではなく、物語に引き込まれ感情移入しました。

ロシア・ソ連の歴史に興味がある人

今年の2月にロシアがウクライナに侵攻して、現在も戦争は続いています。

しかし両国の確執は今に始まったことではないようです。

この物語にはウクライナ出身の少女が登場します。

ウクライナがソヴィエト・ロシアにどうのような扱いをされてきたかについても少し触れられています。

この小説が歴史について学ぶきっかけになると思います。

『同志少女よ、敵を撃て』感想

戦争とは何か、敵は誰なのか、女性が主人公だからこそ考えさせられました。

主人公の少女・セラフィマは狩猟で銃を扱っているとはいえ、戦争に行くことなどまったく想像していませんでした。

そんなセラフィマが狙撃兵になったのは、母が殺された復讐心からです。

他に登場する女性狙撃手たちにもそれぞれ背景があり、もちろん性格も考え方も違います。

そんな当たり前のことが物語に深みを持たせています。

訓練・実戦を重ね狙撃手として成長して戦果を伸ばしてくと、だんだん戦果を伸ばすことが快楽になっていくのが読んでいて怖かったです。

高揚した状態では、自分が殺されることに対しても感覚が麻痺して鈍感になっていました。

ただセラフィマが異常なのではなく、戦争がそうさせてしまったのです。

戦争を知らない自分からすると、人を殺すことや日本が昔やっていた特攻についても自分はとうていできないと感じます。

ただし実際にそのような状況に置かれていないから言えることなのかもしれないという思いもあります。

戦後についての描写も印象的でした。

生き残って平和な時代を生きるのは幸せに違いないはずなのに、精神が戦場に最適化されてしまったせいで多くの人が心に失調をきたしたというのは皮肉なことです。

『同志少女よ、敵を撃て』印象に残った言葉

イリーナが振り返った。両肩を摑んで、彼女は言った。「楽しむな」  暗がりでその表情はよく分からなかった。  それにも増して意味の分からない言葉だった。  セラフィマの脳裏は興奮で満たされていた。高揚した気分が、イリーナの言葉をどう受け取るべきかの判断を鈍らせた。


戦争を生き抜いた兵士たちは、自らの精神が強靭になったのではなく、戦場という歪んだ空間に最適化されたのだということに、より平和であるはずの日常へ回帰できない事実に直面することで気付いた。

『同志少女よ、敵を撃て』学んだ単語・知識

督戦(とくせん)

① 部下を監督激励して戦わせること。
② 後方にいて、前線の軍を監視すること。

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韜晦(とうかい)

自分の才能、地位、形跡などをごまかしてわからないようにすること。他人の目をくらまし、隠すこと。

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