こんにちは、こうへい(@koheinoblog)です。
小説『生きてさえいれば』 小坂 流加(著)を紹介します。
生きていることの重みを感じさせてくれる作品です。
38歳の若さで作者が逝去した後に、パソコンに残されていた原稿を家族が発見し刊行されることになりました。
この小説のキーワードは「春夏秋冬」「姉妹・兄妹」「手紙」です。
オススメ度:
特におすすめな方
著者の作品『余命10年』を読んだことがある方
変わり映えのない生活に嫌気がさしている方
Kindle Unlimitedに入っている方
(2022/11/15時点ではこの作品が読み放題の対象に入っています。)
あらすじ
「生きていなくちゃ、悲しみや絶望は克服できないのよ」――大好きな叔母・春桜(はるか)が宛名も書かず大切に手元に置いている手紙を見つけた甥の千景(ちかげ)。病室を出られない春桜に代わり、千景がひとり届けることで春桜の青春の日々を知る。春桜の想い人(秋葉)との淡く苦い想い出とは? 多くの障害があった春桜と彼の恋愛の行方と、その結末は?
感想
著者の死を知っているが故か、儚さを強く感じてしまいます。
基本的には小説は、「誰が描いたか」ということより「何が描かれているか」を重視するべきだとは思うのですが、背景を知るからこそ理解できることもあるはずです。
この物語の結末にも、著者の想いが込められているのではないでしょうか。
あえて春桜と秋葉の再会を描写せず、2人がいる病室の外にいる千景と夏芽を描写しています。
冒頭で死を考えていた千景と、兄に負い目を感じている夏芽。
これからも生きていくこと、そして恋をすることを仄めかして未来を見せています。
春桜の秋葉へのアプローチは恐怖を感じるほどでした。
秋葉に恋をしているのか自分のものにしたいだけなのかわからず、春桜が理解できませんでした。
でもその後の太字になっている春桜の台詞で秋葉も理解したように、僕もわかりました。
きっかけは名前だったけれど、今は心から秋葉に恋をしているということが。
そして冬月のねじ曲がった行動がさらに浮き彫りになりました。
それでも冬月が嫌いになれないのは不思議です。
この前に読んでいた『星やどりの声』もそうだったのですが、登場人物の名前につながりがある作品でした。
そして亡き父のある一言が娘にとってトラウマになっているところも同じです。
小説を読んでいると、こういうことがよく起きます。
自分としては意図していなかったにも関わらず、直前に読んだ小説と同じ要素が見つかるのです。
印象に残った言葉
人の心の奥に眠っているものなんて大体ろくなものではない。永遠に眠らせておく術を僕たちは充分に会得している年齢なのに、似たような鍵穴を持った人間に出会って気が緩んでしまったのだろうか。
獰猛なお母さんを一瞬で手懐けている秋葉さんは尋常ではない。冴えないのは風貌だけで、ひょっとしたらものすごい人なのかもしれない。
知らなかった単語・知識
啓蟄(けいちつ)
二十四節気の一つ。太陰太陽暦の2月節 (2月の前半) のことで,太陽の黄経が 345°に達した日 (太陽暦の3月5日または6日) に始り,春分 (3月 20日または 21日) の前日までの約 15日間であるが,現行暦ではこの期間の第1日目をいう。啓蟄の語源は,蟄虫啓戸 (地中にひそんでいた虫が戸を啓いて地上にはい出るという意味) に由来し,昔中国ではこの期間をさらに5日を一候とする三候に区分した。
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
出奔(しゅっぽん)
① 逃げて跡をくらますこと。逐電。逃亡。かけおち。
精選版 日本国語大辞典
② 江戸時代、徒士(かち)以上の武士が逃亡して跡をくらますこと。失跡。
「お見舞いに生花はあかんねん」
お見舞いの「生花」が禁止されている病院が増えているようです。
理由としてはいくつかありそうですが、以下が主です。
①感染症のリスクを避けるため
②世話や処分で患者や職員の負担になるため
ただし①については日本感染症学会が以下のような見解を示しています。
免疫不全がなければ花瓶の水や鉢植え植物は感染源とはならない
施設内感染対策相談窓口 (kansensho.or.jp)