こんにちは、こうへい(@koheinoblog)です。
小説『神様の定食屋:2 ごちそうさま、めしあがれ』 中村颯希(著)を紹介します。
『神様の定食屋』の続編です。
前作に負けず劣らず、美味しそうな料理と感動的なエピソードです。
この小説のキーワードは「思い出の料理」「憑依」「愛」です。
『神様の定食屋』 中村颯希(著)感想【料理と言葉で想いを伝える】
オススメ度:
特におすすめな方
子どもがいる方
伝えたいことがあるのになかなか言葉にできていない方
Kindle Unlimitedに入っている方
(2022/11/25時点ではこの作品が読み放題の対象に入っています。)
あらすじ
「料理を上達したい」という願いと引き換えに、神様から未練を残した魂を憑依させられていた高坂哲史。その神様と会えなくなって、はや数ヶ月、いつもの通り妹と気まずくなった哲史は、神社を訪れていた。返事がないとわかっていながらも神様に話しかける哲史にまさかの返事が! 何やら未練を解決してくれる神様と哲史のことが魂の間で話題になっていたようで――。忘れたくない味、忘れられない味を繋ぐハートフルストーリー第二弾。
目次
一皿目 出汁巻き玉子
二皿目 茹でとうもろこし
三皿目 名前のない野菜炒め
四皿目 〆の鯛茶漬け
ごちそうさま、めしあがれ
おかわり メンチカツ
感想
哲史にとって「てしをや」がかけがえのないものになっていることが伝わり感慨深いです。
前作に比べ本作では、登場する魂が若い人が多く、その分未練も強い気がしました。
読んでいるこちらも胸が苦しくなるところがありました。
もっと生きたかったという思いを持って当たり前です。
また、若く死んだからといって残念な人生などではなく、短かったけれどぎゅっと詰まった最高の人生だと思ってほしいという言葉が響きました。
特に印象に残っているのは「三皿目 名前のない野菜炒め」の祖父の魂と孫です。
この孫というのが前作で「てしをや」を危機に陥れた男でした。
やったことは許せませんが、この男は鬱屈した思いを抱え苦しんでいました。
祖父のおかげで悩みの一部は誤解だったこともわかり更生します。
この世界では死んでしまった人が、哲史の体を借りて愛する人に料理を作って、想いを伝えることができます。
ただしそれは小説の世界だからです。
現実では一度死んでしまっては、もう想いを伝える術がありません。
だからこそ生きている間に、愛する人への想いを言葉にすることが大事だと思いました。
死んでしまったときに未練が完全にない状態というのは想像できないですが、少しでも思い残すことがないようにしたいものです。
印象に残った言葉
のうのうと笑い、喜び、新たに出会った誰かと思いを交わしていくのだろう自分を、彼女は悟った。こんなにも痛む胸の傷さえ、徐々に薄らぎ、時間という名のかさぶたに覆われてしまうことを予感した。
泣いていいのは自分たちではない。ただでさえ病身の娘を、さらに不安がらせてはならない。かといって、明るく振舞うのもわざとらしい。それではかえって気が詰まる。だから──穏やかに。
(手をかけるって愛情ってのも、もちろんあるけどよ。俺ァ、そんな料理できねえもん。ちんたら台所に立ってたらさ、子どもは寂しがって、「抱っこお」って膝に抱き着いてくるわけ。それなら、苦手な料理をねちねちやるよりさ、さっさと片付けて、抱っこして、一緒に遊んでやりてえじゃんよ)
「まだやり直せる、おまえならできる、って……、親が言うたびに、俺の今の人生は、やり直さなきゃいけないものなのかって……今は、できてないのかって……痛感して……っ、情けなくて……っ」
知らなかった単語・知識
三日にあげず
「間をおかず。しばしば。度重なる様子。」という意味です。
「三日にあげず」の意味とは?意味や使い方を解説! | 意味解説 (meaning.jp)
非常に間違いやすい言葉であり、「三日とあけず」と誤表記・誤読されがちです。
誤表記の方を可能な限り漢字で書くと「三日と空けず」になりますが、正しい方である「三日にあげず」は「三日に上げず」または「三日に挙げず」となります。
本当に3日以上間が空かないのであれば、文字通り「三日と空けず」でも間違いではありません。しかし「三日にあげず」は慣用句で、この場合の「三日」は本当に三日間という期間を指しているのではなく、「非常に短い期間」という意味になります。
四日経とうが五日経とうが「三日坊主」ですし、明智光秀の「三日天下」は実際には2週間弱です。
そして「あげず」は、この言葉単独で「間をおかずに同じことを繰り返す。しばしば行う」という意味になります。
その前に「三日に」とつくことで、「非常にしょっちゅう」「驚くほど頻繁に」というような強調した表現になるのです。