こんにちは、こうへい(@koheinoblog)です。
書籍『君について行こう(上) 女房は宇宙をめざす』『君について行こう(下) 女房と宇宙飛行士たち』 向井 万起男(著)を紹介します。
「女房」とは、日本初の女性宇宙飛行士・向井千秋さんのことです。
慶応病院の医師である著者が、千秋さんとの出会いから打ち上げまでを赤裸々かつユーモラスに綴っています。
ちなみに『宇宙兄弟』に出てくるJAXAの茄子田理事長は向井万起男さんがモデルです。
オススメ度:
特におすすめな方
宇宙や向井千秋さんに興味がある方
宇宙兄弟(マンガ・アニメ)が好きな方
夫婦の形について考えている方
あらすじ
『君について行こう(上) 女房は宇宙をめざす』
恋女房が宇宙飛行士になった! 「自分の夢を叶えることに懸命になっていたら、亭主のことなんか忘れちゃったの」なんて女房に言われても、「オレはへっちゃらさ」と夫はやせ我慢。別居結婚もいとわず、厳しい飛行訓練にがんばる妻を見守り、応援しながらもちょっぴり切ない心の内をポロリ。
目次
文庫版まえがき
第一章 出会い
第二章 宇宙飛行士をめざす
第三章 結婚
第四章 生い立ち
第五章 無念な決定
第六章 搭乗が決まった!
第七章 乗組員仲間
第八章 乗組員の配偶者たち
『君について行こう(下) 女房と宇宙飛行士たち』
宇宙飛行士の亭主が知っているのは、女房の知られざる素顔だけではない。NASAへ乗り込んで出会った宇宙飛行士たちは、意外にも心優しいユーモアあふれる人間だった。厳しい訓練に耐えながら、いつも明るさを失わない乗組員たち。その姿に感動し、宇宙飛行士の妻たちと励まし合った、打ち上げまでの46日間の行動を記録にとどめた。
目次
文庫版まえがき
第一章 宇宙飛行の記念品
第二章 マスコミ対応訓練
第三章 科学実験シミュレーション
第四章 最終舞台稽古
第五章 NASA専用機に乗る
第六章 ついに打ち上げ
感想
僕は『宇宙兄弟』が大好きです。
作者である小山宙哉さんが、この本がきっかけとなって『宇宙兄弟』が生まれた、と書いているのをどこかで見てからずっと読みたいと思っていました。
1993年生まれなので、向井千秋さんの初搭乗のときは1歳でした。
もちろんそのときの記憶はありません。
後から向井千秋さんが日本初の女性宇宙飛行士だと知りました。
ただ人柄などは全く知らなかったので、この本がとても興味深かったです。
万起男さんが千秋さんについて書く文章を見て、子どものように純粋でまっすぐな方という印象を受けました。
もちろん宇宙飛行士にもいろんな方がいるというのは理解していますが、僕がイメージする宇宙飛行士の性格にぴったりです。
結局、内藤千秋と私の決定的な違いは、私はいろいろ〝深く〟考えたが、内藤千秋は、〝わあ、おもしろそう!〟と感じたまんま何も考えなかったということにつきる。
「な ~んだ、そんなこと。そういうことなら、ぜ ~んぜん心配しなくていいの。だって、私に思想なんてないもん!」
そうかと思えば「凜々しく生きる」というのが千秋さんの口癖でありモットーだというのも素敵です。
万起男さんについては、タイトルにある「君について行こう」を見て抱いていたイメージと違っていて驚きました。
時代というのもあると思いますが、女性を下に見るような描写が何度か出てきます。
千秋さんは結婚前にわかっていたようですが。
また千秋さんがアメリカに行く際には自身もアメリカの病院に留学します。
家事をやってあげるのかと思いきや、すべて常に忙しい千秋さんが担当です。
女ならば女らしく、「清々しく生きる」とでも言ってほしい。
女のくせに〟自分が選ばれるようにと本気で戦っていたというのか! 私は打ちのめされた。
私はラクを好むほうなのだ。こういう男と夫婦になってしまったことを諦めてもらうしかない。
ただし、そんな万起男さんですが千秋さんのことを愛しているというのがとても伝わってくるので不思議です。
自然体に千秋さんのことを応援しているのです。自慢の愛妻という感じです。
お似合いの夫婦だと思います。
こればっかりは実際に読まないと理解できないと思います。
NASAという組織や、宇宙飛行士そしてその家族についても書かれているのでとてもおもしろかったのですが、1つ理解できない箇所がありました。
「趣味:家族揃ってのピクニックや遠出」。リックは趣味を聞かれると、いつも同じ答えをする。一応国民に向けたイメージというものがある宇宙飛行士は、普通こういう趣味を持たない、いや、持っていても堂々と言ったりしない。平気で言うのはリックだけだ。
家族揃ってのピクニックや遠出は何がいけないのかまったくわかりません。国民に向けたイメージとあるので、著者独自の考えでもなさそうです。
僕は素敵な趣味だなとしか思わなかったのですが…気になります。
スペースシャトルという単語に久しぶりに出会い、嬉しくなりました。
千秋さんが宇宙へ行くときには現役でしたが、スペースシャトルは2011年を最後に使われなくます。
まだ飛べる状態でしたが、コストが莫大だったことが一番の理由だそうです。
かっこよくて好きだったので残念でした。
グリーン・カードという単語にも出会い、嬉しくなってしまいました。
『宇宙兄弟』で出てきた使われ方とは違いますが、実際にあるのだと初めて確認できたからです。
実際のグリーン・カードは訓練に使用されるもので、「○○という異常事態が起こっている」というような設定が書かれた緑のカードを仕掛け人が事前に張っておきます。
宇宙飛行士は、緊急事態も想定した訓練をしなければいけないのです。
『宇宙兄弟』では試験に使われており、トラブルを引き起こさせる命令が書かれていました。
チームが大混乱になりましたがそれを乗り越えた後の関係性がすばらしく、印象的でした。
印象に残った言葉
私は「家族支援文書」を読んで感心した。何に感心したかというと、このプログラムの根底に流れている〝人間とは弱いものだ、脆いものだ、助けを必要としているのだ〟という考え方、さらに、〝宇宙飛行士だって、人間としての弱さと脆さを持っているのだ〟という事実を NASAという国家機関があっさり認めていることに感心した。
「マキオちゃんに私の底力を見せてあげるから、よく見ていてね」
私に、一人の職業人としての力を見せてあげるから、よく見ていてほしい、これからは、女性としてばかり見ないようにさせてあげるからね、と言っているのだ。
知らなかった単語・知識
みなし児(孤児/孤)
《「身無し子」で、「身」は身寄りの意か》死に別れたり捨てられたりして親のない子。こじ。
goo国語辞書
NASAでは「打ち上げ日より四五日前」などという長ったらしい表現の代わりに、いつも独特の略語を使う。どういう略語かというと、まず、「打ち上げ」を意味する英語 Launchの頭文字 Lを書く。そして、次に、マイナス 45と入れる。つまり、 L‐ 45。