こんにちは、こうへいです。
小説『 この恋は世界でいちばん美しい雨 (集英社文庫)』 宇山佳佑(著)を紹介します。
表紙の絵がとてもきれいです。
不条理な設定にハラハラしたり悲しくなったりしますが、最後には晴れやかな気持ちになれる本です。
大切な人がいる全員におすすめです。もっと大切にしようと思えます。
オススメ度:
あらすじ
駆け出しの建築家・誠と、カフェで働く日菜。雨がきっかけで恋に落ちた二人は、鎌倉の海辺の街で愛にあふれた同棲生活を送っている。家族のいない日菜に「夢の家」を建ててあげたい、そのために建築家として名を上げたいと願う誠だったが、ある雨の日、日菜と一緒にバイク事故で瀕死の重傷を負ってしまう。目を覚ました彼らの前に、“案内人”と名乗る喪服姿の男女が現れる。そして誠と日菜は、二人合わせて二十年の余命を授かり、生き返ることに。しかしそれは、互いの命を奪い合うという、あまりにも苛酷で切ない日々のはじまりだった――。
ポイント
誠の夢
建築家としての誠の目標は、誰かの長い人生に寄り添える建物を造ることです。
恋人の日菜と出会ってからは、日菜に夢の家を造ってあげることが誠の夢です。
五戸から七戸くらいの家が建つ小さな町のようで、人と人とがつながって暮らすことができる場所。
日菜には両親がいないこともあり、このような夢を抱くようになりました。
元々は大きな建設会社で図面を引く仕事をしていましたが、このままではいけないとの思いから独立しました。
尊敬する建築家・真壁哲平が審査を務める市立図書館の建築コンペに参加します。
レインドロップス
日菜が働いているカフェの名前です。
雨が降る午後にレインドロップスで誠と日菜は出逢いました。
雨が嫌だと話しかけた誠に対して、日菜は雨が好きと返します。
また和泉式部の和歌を引用して雨は〝恋の涙〟であると誠に教えました。
店主の「エンさん」こと大石縁(おおいしゆかり)はズボラな酒飲みです。
カフェを始めそうな性格でもない上に、レインドロップスの内装が趣味の良い高価なものばかりなため何か訳がありそうです。
ライフシェアリング
この世界では死後〝魂の査定〟が行われ、評価によって輪廻する生物が決まります。
その際に一度だけ現世に雨を降らせることができるという特典が与えられます。
〝奇跡対象者〟に選ばれると現世に戻れますが、「ライフシェアリング」という制度があり2人で20年の命を奪い合いながら生きていかなければいけません。
ルールは一方が幸せを感じたら相手の命を1年奪うことができる、逆に不幸を感じたら相手に命を1年奪われるというものです。
案内人の間で奇跡と呼ばれる案件の1つがライフシェアリングのようですが、ハズレとしか思えません。
ネガティブで幸せを感じにくい誠と、ポジティブで幸せを感じやすい日菜は、この制度では相性が最悪です。
愛し合っている2人にすれ違いが起きてしまいます。
感想
もちろんこの小説はフィクションなので、ありえない設定です。
命を奪い合うなんてことにはなりません。
ただし現実にも通ずるところがあると思います。
それは幸せの感じ方についてです。
幸福を感じやすい人、感じにくい人がいるのはある程度仕方がないことなのかもしれません。
感じにくい人も、幸せを感じないように意図して生きているわけではないです。
それでも違いが出てしまうのは、先天的な原因でしょうか、後天的な理由でしょうか?
どちらかというと僕も感じにくい方に当てはまります。
基本的にはマイペースな性格なのですが、嫌なことがあるとそちらに考えが持っていかれるような面があります。
かと言って「自分より恵まれない人はたくさんいるから幸せだ」と無理に考えるのも違う気がします。
そもそも幸せってなんでしょうか?
難しいですね。
はっきりとした答えは見つかりませんが少なくとも、1日1日を大切にしよう、そして大切な人を幸せにしたいと思っています。
印象に残った言葉
だから落ちたんだよ。君みたいな半人前の自己評価八十五点の作品を俺が評価するとでも思ったか?百点のものを出してこいよ。それともなにか、八十五点っていうのは保険を掛けた点数か?
プロポーズしたときに約束したんだ。生涯を懸けて彼女を守って見せるとね。悲しいことがあったら僕が君のハンカチになる。苦しくて立ち止まりそうになったら椅子に。誰かに傷つけられたら盾になる。そうやって初世のささやかな幸せを生涯守ってみせると約束したんだ。
学んだ単語・知識
天泣(てんきゅう)
上空に雲がないにもかかわらず,雨が降る現象。風上にある雲からの雨であったり,雨が降ってくる間に雲が移動したり消えたりする場合などに起こる。天気雨,狐の嫁入りともいう。
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