こんにちは、こうへい(@koheinoblog)です。
小説『少女』 湊かなえ(著)を紹介します。
自分の目で死を見たい女子高生2人が、それぞれボランティアに行く物語です。
湊かなえらしい伏線回収とイヤミスぶりが特徴的です。
オススメ度:
この小説の魅力
女子高生たちの人生観・死生観
登場人物同士のつながり
因果応報
あらすじ
親友の自殺を目撃したことがあるという転校生の告白を、ある種の自慢のように感じた由紀は、自分なら死体ではなく、人が死ぬ瞬間を見てみたいと思った。自殺を考えたことのある敦子は、死体を見たら、死を悟ることができ、強い自分になれるのではないかと考える。ふたりとも相手には告げずに、それぞれ老人ホームと小児科病棟へボランティアに行く――死の瞬間に立ち合うために。高校2年の少女たちの衝撃的な夏休みを描く長編ミステリー。
感想
嫌な読後感でした。もちろんほめ言葉です。
登場人物どうしがつながっていて、因果は巡るのです。
ここまでつながることは現実にはまずあり得ませんが、そこが小説のいいところです。
由紀、敦子、紫織、星羅、小倉、おっさん、牧瀬、昴、タッチ―、三条ホームのおじさん。
結末に驚くと同時に、由紀と敦子のこれからを思うと恐ろしくなってしまいました。
由紀のおばあさんの言葉「因果応報、地獄に落ちろ」が糸を引きます。
この小説は由紀と敦子それぞれの視点で描写されますが、実のメインは紫織と言っても過言でありません。
紫織に始まり紫織に終わる、そんな展開に驚きました。まさしく因果です。
そして由紀。
冒頭でも死体こそ見たことがないとはいえ、なかなか過激なことをしていたとわかりました。
そしてラストでも間接的とはいえ…。
敦子に対しては思いやりがありますが、それ以外には本当にドライです。
最後に敦子。
敦子は周りの目を気にして溶け込もうとしている様子や、いざというときの思い切りの良さが特徴的です。
由紀をトラウマから救い、由紀のおばあさんの死も防ぎました。
最も「死」からは遠いような敦子ですが、紫織の親友の死に関わっています。
本人が気づいていないのは救いなのでしょうか。
結局2人が死について悟ることはありませんでした。
今後、由紀と敦子が因果応報にならなければの話ですが…。
印象に残った言葉
小学校より中学校、中学校より高校、って友だち関係が広がっていくのはあたりまえのことだけど、あたしの場合、広がってるっていうよりは、薄まっている感じがする。カルピスの量は一緒で水だけ増えていってる感じ。
想像力が乏しいくせに、自分では知性があると思っている人が、自殺を選ぶ。自分が想像する世界だけがすべてだと思い込み、それに絶望して死を選ぶなど、なんて短絡的なのだろう。
自分は不器用だという人の大半は、気が利かないだけ
悪いことをしたから殺される。これは、究極の罰は死だと言ってるのと同じでしょ。じゃあ、死は究極の罰なのかしら。重い病気で死んでしまうかもしれないあの子たちは、何か罰を受けなきゃならないことをしたのかしら。死は罰ではありません。むしろこの世に生きていることの方が罰なのです。
世界は広い。遠くまで逃げれば、なんとかなるでしょ。
この小説もオススメ
『少女』が好きな方は、麻耶雄嵩の『神様ゲーム』『さよなら神様』もおすすめです。
イヤミス、そして読後感の悪さという点が共通しています。