小説

他人だからこそ素直になれることもある『ツバキ文具店』 小川 糸(著)

こんにちは、こうへいです。

小説『ツバキ文具店』 小川 糸(著)を紹介します。

文具店と手紙の代書を仕事にしている鳩子の日常を描いた物語です。

鳩子が書いた手紙が、実際に手書きで挿入されているのが特徴的です。

オススメ度:

この小説の魅力

何気ない日常の中にある幸せ

後悔しても巻き戻せない、過ぎ去った日々のほろ苦さ

手書きの手紙を見ると、自分も字が書きたくなる

あらすじ

鎌倉で小さな文具店を営むかたわら、手紙の代書を請け負う鳩子。今日も風変わりな依頼が舞い込みます。友人への絶縁状、借金のお断り、天国からの手紙…。身近だからこそ伝えられない依頼者の心に寄り添ううち、仲違いしたまま逝ってしまった祖母への想いに気づいていく。大切な人への想い、「ツバキ文具店」があなたに代わってお届けします。

感想

ほのぼのと心が暖かくなる物語でした。

鳩子は祖母に反抗して家を出たきり、死に目に会えなかった後悔を抱きながら、祖母のいない日常を生きています。

文具店と代書の仕事を継ぎ、祖母の教えは守りつつも鳩子の色も出しています。

鳩子と周りの人たちとの関係がちょうど心地いいです。

隣の家のバーバラ婦人との間にも、お互い「親しき中にも礼儀あり」ともいうべき気遣いがあります。

かといってよそよそしさや堅苦しさは全くなく、素敵なご近所付き合いです。

この小説の特長は何と言っても、物語に合わせて手書きの手紙が挿入されていることだと思います。

挿絵ならぬ挿手紙ですね。

鳩子が書く手紙や、祖母が書いた手紙が見れます。

鳩子の手紙は依頼者や目的に合わせて字がかなり変わるので、見ていておもしろいです。

実際にこの挿手紙を書いた人が1人なのか気になるところです。

きれいな字を見るとついつい自分も書きたくなってしまいます。

祖母の手紙は字にそのときの感情が表れています。

手紙を通して厳格な祖母の悩みや弱っている様子を目の当たりにして、心がきゅっとなりました。

家族には本音を話せず、他人だからこそ自分の素直な気持ちを打ち明けられるというのは、よくあることかもしれませんがままならないものですね。

各見開き左側のページ左下に小さな絵があり、パラパラ漫画になっているのがなんとも可愛らしいです。

鳩が手紙を運んでいるところが好きで、何度も繰り返しました。

小説にパラパラ漫画がついているのは初めて見ました。

今まで小説を読んできて羊皮紙が出てくる作品がいくつかありました。

狼と香辛料』や『ハリー・ポッター』などが思い浮かびます。

この作品にも登場し、羊皮紙に書いてみたいという気持ちがふつふつと湧いてきました。

それなりの値段がすると見た記憶がありますが、一度は買ってみようと思います。

羊皮紙に限らず、紙の種類はいろいろあることがわかりました。

印象に残った言葉


失くしたものを追い求めるより、今、手のひらに残っているものを大事にすればいいんだって。


「ありがとうございます。私、もうこの記憶だけで、一生、生きていけるかもしれません」

知らなかった単語・知識

仕舞屋(しもたや)

(「しもうたや(仕舞屋)」の変化した語)
① 商売をやめた家。店じまいをした家。
② (商店に対して) 一般住宅。

精選版 日本国語大辞典

螺鈿(らでん)

漆工芸の一技法。夜光貝・あわび貝など、真珠光を放つ貝殻を文様に切って、木地や漆塗りの面に嵌めこんだり、貼りつけたりしたもの。厚貝法、薄貝法、割貝法、蒔貝法などがあり、また、貝の裏に彩色したり、毛彫や彫刻をほどこす方法もある。日本には奈良時代にその技法が伝えられ、平安時代には蒔絵に併用されて独特の効果をあげた。

精選版 日本国語大辞典

茅の輪

チガヤという草で編んだ輪のこと。夏越の祓(なごしのはらえ)で茅の輪くぐりを行うことで、年越の大祓(おおはらえ)の後にたまった半年間の穢れを祓う(はらう)意味がある。

茅の輪くぐりと日本神話 意味・由来 (worldfolksong.com)

偉丈夫(いじょうぶ)

体が大きくたくましい男子。また、人格のすぐれてりっぱな男子。

精選版 日本国語大辞典

七草爪

陰暦正月七日の七種の節供に、邪気を払うために、七種の菜(な)をゆでた汁に指を浸し爪を切ること。

精選版 日本国語大辞典
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