こんにちは、こうへいです。
小説『世にも奇妙な君物語』 朝井リョウ (著)を紹介します。
人気ドラマ「世にも奇妙な物語」を朝井リョウがオマージュした小説です。
ドラマと同じく、少し奇妙な設定と絶妙なオチが仕掛けられています。
オススメ度:
目次
『世にも奇妙な君物語』あらすじ
第1話 シェアハウさない
主人公・浩子は過去のある経験がきっかけで、ノンフィクションライターとして1冊の本を出版することを夢にライターになった。
最近はシェアハウスをテーマに記事を書こうとしている。
そんなときにたまたま知り合った女性が住んでいるのはシェアハウスだった。
そこには他人同士で年齢もばらばらな男女4人が住んでいる。
そのうちの1人がもうすぐシェアハウスを出て一人暮らしを始めると聞き、取材に都合がいいと思った浩子が代わりに住むことを提案する。
第2話 リア充裁判
新たな法律「コミュニケーション能力促進法」が施行された。
一環として18歳以上の就労前の市民から無作為に選ばれた対象者が、それまでの日々において「日本人らしい豊かなコミュニケーション能力」を培ってきたかを問う【能力調査会】通称「リア充裁判」が設けられた。
主人公・知子が尊敬する姉は、リア充裁判に落第し課題を言い渡され、追試も受けさせられることになった。
姉はリア充裁判で重視されていたSNSはやっておらず、きちんと相手の顔を見て直接話すことでしか思いが伝わらないという考えを持っていた。
それから数年後に知子もリア充裁判の対象者に選ばれ、ハガキが届く。
第3話 立て!金次郎
主人公・金山孝次郎は幼稚園の先生。
学年主任の須永から、年間の行事を通してすべての子どもが平等に目立つように采配することを指示される。
須永は子どものことよりPTA内での評判を気にしており、幸次郎に自分の考えを押し付ける。
表計算ソフトで機械的に子どもたちを各行事のポジションに振り分けるシステムを自作し使っており、孝次郎にも勧める始末。
しかし孝次郎は本人の個性・気持ちを考えて、それぞれに合った活躍の場を与える方がいいと思っている。
ただし前回の文化祭意向で、PTA内での須永の評判がうなぎのぼりというのも事実である。
孝次郎は悩みながらも、運動会に向けて一計を案じる。
第4話 13・5文字しか集中して読めな
主人公・香織はネットニュース会社ワールド・サーフィン社に勤めるライター。
ワールド・サーフィン社では「ツイッターやラインをはじめとするSNSに慣れ、長い文章を読まなくなったネットユーザーのニーズ」に合わせた手法を提唱した。
13.5文字のタイトル。3行の要約文。そして本文に至る―というもの。
世間では一部「すっぴん公開等のどうでもいいニュースはやめてほしい」や「字数が少ないと、誤解を招くような表現になっていることが多くて迷惑」などという意見もある。
それに対して編集室長の板谷は全ての人の意見を受け止めつつ、丁寧に反論する。
「できるだけ多くのトピックを平等に配信し、皆様に取捨選択をしていただく──それがニュースメディアとしては健全な在り方ではないでしょうか。配信する側がトピックに優劣をつけ始めたら、それは偏向報道になりかねません。現に、すっぴん公開というトピックが他のどのトピックよりもアクセス数が多いこともあるんですよ」
「そもそも発言への注目度が上がるということは、表に出て仕事をする方々にとっていい影響を与えてもいると思います。こんな発言があったんだ、じゃあ来週はどんな発言が飛び出すのだろう、観てみたい──こういう循環が発生すると考えていただければと」
「短いタイトルや要約文については、確かに、おっしゃるとおり、誤解を招いてしまうこともあります。ただ、すぐに修正ができるのが弊社独自の強みでもあります。事実と異なることを報道してしまった場合、紙ではなくインターネットというフィールドで情報を伝えている私たちは、どのメディアよりも早く訂正できます」
香織は板谷に憧れ、日々記事の執筆にいそしむ。
第5話 脇役バトルロワイアル
主人公・溝淵淳平は大御所演出家が手掛ける新作舞台の主演オーディション最終選考に参加する。
最終選考のメンバー6人は、全員脇役として輝くタイプである。
大御所演出家は、脇役を長く経験してきた人間のほうが、立て続けに主役ばかりを演じてきた人間よりも芝居に厚みがあると思うようになったらしい。
しかし主役が持つ独特の華もやはり捨てがたいと感じて、今回のオーディションに至った。
『世にも奇妙な君物語』おすすめな人
ドラマ「世にも奇妙な物語」が好きな人
「世にも奇妙な物語」と同じように奇妙な物語が描かれています。
ぞわっとするようなオチも秀逸です。
ドラマが好きな人は、この作品も好きになると思います。
短編集が読みたい人
5つの短編でできた作品です。
各短編ごとで話が完結するので読みやすいと思います。
最後の短編だけは他の短編とちょっとしたつながりがあります。
『世にも奇妙な君物語』感想
独特の世界観がたまりません。
5つの短編すべてがおもしろく、ハズレがありませんでした。
その中でも「立て!金次郎」が好きです。
じんわりと感動するようないいオチで終わるのかなと思っていた矢先、それが見事に裏切られました。
ハートフルから一転、コミカルな話になってしまいました。
他の短編もすばらしく、驚いたり、笑えたり、風刺が効いていたり、飽きが来ないと思います。
『世にも奇妙な君物語』印象に残った言葉
姉のコミュニケーション能力は、「日本人らしい豊かな」ものではなく、「ひどくひとりよがりで、孤立している」ものだ、という評価が下された。大多数の人間が使用しているコミュニケーションツールをひとつも使用していないなんてやりとりを拒否し断絶しているも同然、対面至上主義の人間は相手の時間を奪っている事実に無自覚で傲慢、仲間と団結し何かを達成し、より絆を深めたというエピソードも写真もない、大学生活三年間において飲み会もサークルの先輩の車で行くバーベキューも、キムチやチョコ等を入れるようなたこ焼きパーティも行っていない。