エッセイ ノンフィクション

『続・君について行こう 女房が宇宙を飛んだ』 向井 万起男(著)感想

こんにちは、こうへい(@koheinoblog)です。

書籍『続・君について行こう 女房が宇宙を飛んだ』 向井 万起男(著)を紹介します。

『君について行こう(上) 女房は宇宙をめざす』『君について行こう(下) 女房と宇宙飛行士たち』の続編です。

本作も語りかけるような文章でユーモラスに綴りながらも、著者の千秋さんへの愛情が伝わってきました。

『君について行こう(上) 女房は宇宙をめざす』『君について行こう(下) 女房と宇宙飛行士たち』 向井 万起男(著)感想

オススメ度:

この本の魅力

著者の千秋さんへの愛情が伝わる描写

宇宙、そして宇宙飛行士の魅力がわかる

日本とアメリカの違いがわかる

あらすじ

地球に帰還してきた女房に、宇宙でいちばん感動したことを聞かされて、夫は驚いてしまった。それはじつに意外な内容だった。そんなことを口にした宇宙飛行士は、誰一人いなかった。だが、“オレの女房だからこそ、そういうことに感動したんだ”と納得。宇宙を飛ぶ女房を地上から見守り続けた夫が綴る、驚きと感動の宇宙飛行体験記。

目次
文庫版まえがき
プロローグ
第一章 秒速八キロメートルをめざして
第二章 ケーブルテレビ
第三章 キュウリとナス
第四章 ビハインドの意味
第五章 秘密回線
第六章 世界の女性宇宙飛行士たち
第七章 地球帰還
第八章 重力を感じる!
第九章 人生観は変わりましたか?
エピローグ
あとがき「私と宇宙兄弟」(3)

感想

前作がおもしろかったので、続編も読みました。

著者・万起男さんと千秋さんのことがだんだんわかってきた上で読んでいるので、より楽しめます。

前作は打ち上げまでで終わっており、本作はその続きからです。

読み終わって、この本は著者から千秋さんへのラブレターのようだと思いました。

千秋さんが宇宙飛行で最も感動したのが、宇宙から見た地球の美しさではなく、無重力の経験でもなく、地球に帰ってきてから重力を認識したことというのが印象的です。

まさしく宇宙に行った人でないとわからない部分ではないでしょうか。

僕は無重力で浮く体験がしたいなと昔から思っていましたが、地球の重力を感じたいとは思ったことがないですし、ずっと地球にいても重力を感じることはできません。

千秋さんは帰還してから、わざと物を落として落ちている様子を見ていたそうです。

何も事情を知らない人からすると少し怪しく思ってしまうかもしれませんが、本人にとっては大事なことだったのです。

そして、この話が印象に残ったのはエピソード自体の意外性というのもありますが、実際に経験した千秋さんではなく夫である著者が語っているからだと思います。

著者は千秋さんがわざと物を落としているときに、それを見て笑ったり、周りの目を気にしてやめさせようとしたりしました。

それを後から思い返し、もっと一緒になって喜んであげればよかったと後悔するのです。

しかし著者も僕と同じように、地球の重力がわからないので仕方がないことです。

仕方がないことではありますが、悲しくなってしまいますね。

これだけでも著者の千秋さんに対する愛情が伝わってきますが、これ以上に強く感じたところがありました。

それは、千秋さんが地球に帰ってから講演会・インタビューで同じ質問をされるという話です。

その質問とは「宇宙に行って地球を見て、人生観が変わったか?」というものです。

これに対して千秋さんは何も変わらないと答えますが、質問をした人は不満そうです。

千秋さんとこのやりとりをしてから著者が感じたことが綴られています。

著者にとって、千秋さんが宇宙飛行を通して何も変わっていないのは当然であり、そんなことは思いもしなかったのです。

そういう質問をした人が期待した答えを想定しつつ、こう反論します。

私は声を大にして言いたい。私の女房をばかにしないでほしい!  と。私の女房は宇宙に行く前から、人間を分け隔てなく見るヤツだったのだ。私の女房は宇宙に行く前から、自分の人生を精いっぱい生きていこうと思っているヤツだったのだ。

印象に残った言葉


女房は吐いた。白くて苦い胃液を少しだけ。袋をしまった女房はつぶやいた。〝私は宇宙に実験をしにきたんだ、どんなことがあっても実験だけはやり遂げるんだ、こんなことでくじけてなんかいられないんだ〟。そして、女房は通路から再び実験室の中に飛び出していった、今度は方向感覚を失わないように慎重に。


アイツはオレたちと同じ訓練を受けてるんだぜ。オレたちと同じように、厳しくて長い訓練も、一見つまらない訓練も、恐怖が心の片隅を走る訓練も受けてるんだぜ。だからさ、オレたちはアイツは信用できるんだよ。アイツが言うことには本気で耳を傾けられるんだよ。


私は内心、アメリカ人のいうレディ・ファーストもいいかげんなもんだぜ、と思っていた。だって、この交信はリロイ・チャオのガールフレンドや私のために行われるのではなくて、リロイ・チャオと私の女房のために行われるものだ。主役は乗組員のほうなのだ。


時代の最先端を行っていると思われがちな宇宙飛行士という職業についている女性に医師がヤケに多いということは、この社会全体がいまだに男尊女卑で満ちているということを見事に表しているのではないか、と私には思えるのだ。

知らなかった単語・知識

スペースシャトルの飛行姿勢

〝特別な工夫をしなければ〟最初の姿勢のまんまで地球のまわりを回り続けるのだ。では、実際には特別な工夫をしているのか? もちろんしている。姿勢制御システムを使って飛行姿勢をコントロールしているのだ。

新装版 続・君について行こう 女房が宇宙を飛んだ
スペースシャトルの飛行姿勢

ノンリンス

(1)洗剤のうち、水拭きを必要としないものを意味する語。
(2)シャンプーのうち、リンスを必要としないものを意味する語。

実用日本語表現辞典

リンス(rinse)

1 ゆすぐこと。すすぐこと。
2 洗剤のアルカリ分を中和したり、洗ったものを柔軟にしたりするために薬剤を加えた水などですすぐこと。また、その薬剤。「髪を―する」「オイル―」

デジタル大辞泉

暁闇(ぎょうあん)

夜明け方のまだ暗いとき。また、そのやみ。あかつきやみ。

精選版 日本国語大辞典

-エッセイ, ノンフィクション